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家事をレスに。

淘汰された100の物たち50【新たな船出】船長の父が造った帆船模型。悩んで手放して得たものとは。

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大型船の船長だった父が若い時に作った帆船模型。それを悩みに悩んだ末、手放した話です。

 

震災と思い出の帆船模型

震災に伴う引っ越しのとき、父は「古いし荷物になるから」と帆船模型を子ども達にくれました。「自由にあそんで」と。

それは父が若いころ洋上で自作した、大きな帆船模型。物心ついたときから実家の飾り戸棚にあり、ずっと眺めていたものでした。

( ゚Д゚)… 

そんな適当に扱えないでしょー!

 

静かなる攻防

「イヤイヤ引越し先で飾ったら?」「向こうに着く前に崩れるよ」「子どもが触ったら壊れちゃうよ」「大丈夫、捨てていいから」「そんな無碍に扱えないよ」「壊していいよ、喜んでるし」

互いを思いやる(体の)攻防が続きます。

実際、作品というより工作だし、50年モノの古さだし、輸送が非現実的なのも解ってる。でもこのままじゃ、処分を負うのは私です。それは勘弁してほしい。

つまりハッキリ言えば「今、処分する家具と共にどうにかなりませんか」ということですよ…到底言えませんでしたけれども!

結局、子ども達は喜び、お持ち帰りとなりました。

( ゚Д゚)ナンテコッタイ

 

年月は物を劣化させる

すでに劣化しているそれは案の定、たった20分間の車中で壊れはじめました。家に持ち込むときに壊れ、子どもが触れては壊れ、風が吹いては壊れ…

我が家に大きな飾り戸棚はなく、机上に飾ればロープに埃がまとわりつく。掃除もしにくく木や糸に埃がまとわりつき、力が入ると壊れてしまう。

解ってました。

断捨離を通じて手放センサーが磨かれた私。直観的にコレあかんヤツやと解っておりました。そして、手放すのに苦労することも。

ホントどうしよう…
 

そして親の体調悪化

大震災と続く余震、仕事も生活もままならない。
そのうえ、年に一度会えるか会えないか…という長距離へ両親が旅立つ。

震災で多くの方が家族や家を亡くしたなか、取るに足りない思いなのは自覚しているけれど、やっぱり引越しはつらかった。

だからこそ帆船も重すぎて。

そんな折、母が手術。次いで父も体質とはいえ内臓機能が低下し、医師にリタイアを薦められたのです。

 

とうとう帆船を手放した

捨てるのも畏れ多いけれど、持ち続けるのも畏れ多い帆船模型。
なにせ父も母も体調不良で、そのうえ船乗り。船を疎かにするのは不安です。

私の素人修理では限界がある。修理見積もしたけれど、作品というより工作だし、プロの全取り換えって、もはや別物…

親は「気にしないで~?捨てていいんだよ~?」とか言ってくれちゃうし。

( ゚Д゚)…

しかし数年後、母のほぼ完治を期に(手放そう)と思えました。そしてお焚き上げをしていただいたのです。

 

新たなる船出

さらに数年経ち、父がドクターストップに。

たとえ陸上でも、突然に発症して救急搬送される場合もある病状です。海上で体調を崩したらひとたまりもありません。母もそれをずっと心配していました。

でも父は、帰港するたび通院して体調を把握し、ずっと節制してきました。そして医師の指示に従い、限界を超える前に下船したのです。今は治療しながら、新しい役職で後進の育成も始めているそう。

両親の新たな船出です。

 

それは覚悟、かもしれない

両親の病気は、帆船のせいじゃない。大事に至らずに済んだのも、帆船のお陰ではない。検診を受け、早期に治療し、節制して努力しているからです。

解ってはいるの。
物のせいにしてはいけないと。

でも、人は物へ思いを乗せてしまう。

私は帆船に思いを乗せてしまい、勝手にしんどい思いをしていました。しかし断捨離によって、それに抗う力をすこし得たようです。

それは「覚悟」に近いものかもしれない。

諦めではなく、肚を決めるとか肚を括るとか、そういう類の。

父はあのとき、肚を決めていたのでしょう。母は…どうだろう、引越しを心苦しく思うふしもあったけど…

とはいえ、今まで夫不在で子を育て、介護して手術して、津波に2度も遭い…母は肚を括って生きてきたのでしょう。父も母も、強い。

なのに私だけ、腹が据わっていなかった。その弱さを船に乗せてしまったのかもしれません。

 

物も心も自分で始末

帆船からすれば、私の思いこそ迷惑な荷物だったでしょう。

やっと最近は迷いも消え、(親の代役で手放したのだ)と思えるようになりました。親がとりあえずも元気だからこそ、思えることだと解ってるけれど。

これからも、ヘタレな私はグジグジ悩むでしょう。覚悟の上!なんてとてもとても。前より少し、マシになっただけ。

これからも、様々な出来事はおこります。
その時、できるだけ理性的でありたい。人や物に思いを乗せて思いつめたり、自分を追い込まないようにしたい…できるだけ、少しでも。

 

なにより、子どもが望むもの以外は、なるべく自分で始末しておこうと思いました。自分にとってはささいな品であろうとも。

…とはいえ、孫ができたらきっと何でも与えたくなるんだろうな…

(;´Д`) 

今から物を減らしておこうっと。

 

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