KAJILESS

家事をレスに。

ルックスや釣書や数字は真の価値を曇らせる。物もそう。

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テーブルセットに恋したり値切ったり、悪態ついたり悔んだり、感謝したりして断捨離する話です。

恋に落ちて、価格も落ちていく。

それは20代のこと。一人暮らしを始めるにあたりホームセンターをうろついていたら、とあるテーブルセットに一目惚れしました。

しめて16,940円也。高い。一人暮らしを始めるのにこれはキツい…
でもなぜか諦めきれず、ストーカーのごとく周りをウロウロしていました。
そして翌日。

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それぞれ1,000円づつ値下がりしています。でも高い。
というかもっと値下がりしますね、これ…
連日、恋する乙女のように通います。

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1週間後、それぞれ1,500円つづの値下がりとなりました。ここで2,480円のテーブルだけ買う私(夫に言わせると悪魔の所業)。だって持ち合わせがなかったんですよ…

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値崩れを起こしてしまい、安くなってしまいました。ここで1,480円の椅子1脚だけ買う私。だって持ち合わせg

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最後の1脚は、ヒーターとまとめ買いして1,000円にオマケしてもらいました。

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苦節3週間。やっとアナタを手に入れた。
しめて4,960円と一人暮らしの前準備としては金額的に助かったのですが… 

ぶっちゃけひどいヤツだった。

重い。錆びる。扱いにくい。ホコリがつきやすい。掃除しにくい。床にキズがつきいやすい。イスに傾斜があって座りにくい。座面は冷たい。天板がうねる。足がガタつく。ぶっちゃけ使いにくい。

えぇ、知ってました。

だって、屋外用ですもの…

うすうす判っちゃいたけれど、使い始めて一瞬で後悔しました。成田離婚なみに後悔しました。私はどうしてコイツに惚れこんだのだろう?

それは偽りの恋であったのか。

今思えば、たくさんの要因がありました。

在庫処分品で、これは安い!実はずっと高価なのかも!というお得感。掘り出し物見つけた!という達成感。セットでお得感があるバンドル効果。さらにそれらは展示品1セットのみ。唯一の品だったのです。ニッチってやつですかね。

さらにどんどん値段が下がるスキミングとかいう戦略もあるそうで(このケースは値崩れでしょうが)。

どんどんお買い得になるにつれ、他の女に取られたくない!というナゾの執着が働きました。

おそるべし販売戦略(?)。まぁこちらも値切っているのでどっこいどっこいですが。

その上、私はそのちょっと前に中国に行っていました。値切ったりふっ掛けられたりを楽しんでいたんです。

その観光旅行のノリと勢いのまま、大事な家具選びを娯楽、というかアバンチュールにしてしまったのでしょうね。アホすぎる。

でもなんか楽しかったので、このやりとりは覚えてるんです。

16年つづいた腐れ縁。

憎いあンちくしょうは、ルックスだけはいいのです。
使いにくいと悪態をつきつつ、結局毎日使い続けました。

そしてその後は嫁入り道具となり、一緒に引越しして、子どもが遊ぶときの机になって、年々愛着が沸いていたのでした。

でも、子ども達に自室を与えるタイミングで、とうとう手放すことに。

子どもも使わない年になった上、置き場所もなくなりました。
本来の用途である屋外に置こうかとも考えたのですが、おしゃれな庭などない上、野ざらしで劣化していくのを見るのがしのびなかったのです。

なんだかんだで、24歳から16年の腐れ縁でした。

やはり情が沸いているので、手放すのはしんどかったです。綺麗にみがいて、リサイクルショップに持って行ったら700円で売れました。

16年前の家具に値がつくなんて!やはり年月が経っても、この方たちは見目麗しかったんですね…

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その後、別件でリサイクルショップに行ったら1,200円で販売されていて、後日無くなっていたので売れたのだと思います。

今度こそは本来の居場所、ガーデンで天職を全うしてほしいと思う反面、雨に当たったとたんに天板は剥げ、足は錆びる運命だよね…と思うと物悲しい。

屋内のテラスとかに居てくれるといいんだけれどね…

別れるときに「愛してた」って気づくもの。

手放すために掃除をしていると、色々な思いが出てきます。

一目惚れしたけど、その入手方法はフェアトレードじゃなかったかも、とか。
逆にどんな手をつかっても手に入れたかった、とか。
マーケットで値切るのは楽しいコミュニケーションだけど、自分でその物の価値を落としているんじゃないのかな、とか。
あの情熱は何だったんだろ、やっぱり恋?とか。

最初はアールヌーボー的ルックスのロマンチストな面倒くさいヤツでした(私からの強引かつ一方的なアプローチだったのにこの言い草)。

それなのに、いつしか子どもまで受け止めてくれる、武骨ないぶし銀の老紳士になっていらっしゃいました。

 

人だって物だって、ルックスや釣書や数字を見てしまうと、真の価値がわからなくなってしまうのかもしれませんね。

高価な物だって使いきれないこともある。相性もある。
逆に、安くても使いにくくても、長く使うこともあるものね。

このテーブルセットは、長く使ううちに腐れ縁になって好きになって、たぶん充分に使い切れたと思います、思いたい。

それどころか、価値とか、愛情とか、運命とか、そういったものって初見じゃわからない、時間をかけて育てていけることもあるってことを、身をもって教えてくれた気すらします。

価値って値札でも釣書でもない。

自分と、物や相手の関係を育むことから得られるものかもしれません。

 

【真に価値ある手ぬぐいの話 ↓ 】

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