兼用・代用で物は減る!淘汰された100の物たち—6個目
淘汰100(略)の6個目は「くけ台」です。
フネさんも使う「くけ台」とは
サザエさんで、フネさんが和裁をするシーンで出てくる「くけ台」。
木製の「く」の字の台の先端に、針山とピンチ(かけはり)がついています。正座した座布団の下に台の片方を敷いて固定し、もう片方についたピンチで布をつまみ、引っ張りながら縫う、裁縫道具です。
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結婚するとき、祖母からくけ台をいただきました。それを手放した話です。
嫁入りと和装
和装が好きです。
結婚するとき、祖母はくけ台を、両親は着物を誂えてくれました。
結婚式や入園・卒園などで着たものの、突然の震災。子どものレンタルはともかく、自前の和装はためらわれ、洋装で済ませること数年間。
そして今、自分で着付け出来なくなりました。
( ゚Д゚)ナンテコッタイ
浴衣はともかく、着物はしんどい。祖母も年をとり、着付けが辛いと洋服になったっけ。茶道や華道をたしなむ訳でもなし、フォーマルな席の着付けはプロに委ねたい。
今の時代、お嫁入りに着物は難しいかもしれません。でも母は、それを知りつつもなお、持たせたかったそう。
こういった思い入れの品ほど、仕舞うのも使うのもはばかられるものです。
かとって手放すなんてとんでもない。
たまに箱を開け、風を通して見惚れては、仕舞いこむばかり。
本当に、着物は美しいです。美術品の様に。
本当は、美術品にしてはいけないのでしょうけど。
引越しと和装
さらに震災の引越しで、祖母の着物や裁縫道具を譲り受けました。
着物と羽織りのセットの着物など、手縫いで手の込んだ品々ですが、祖母仕様で私にはツンツルテン。
半世紀は経たであろう草履は劣化し、いまだ値札がついたバッグも、手持ちの着物に合いそうもないレトロデザイン。
また、小さな店を営んでた頃の商品も沢山ありました。糸は色あせ、1本から販売していた針の多くは中途半端に開封され錆びている。しかし手付かずの針は半世紀の時を経て未だ冴え冴えと輝き、昭和の包装も相まって本当に美しいのです、美術品の様に。
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あぁ、勿体ない…
それらを処分し、供養し、お焚き上げし、転売し…何年もかけて手放し、着物のみとなった、そのときに。
遺品と和装品
祖母が亡くなりました。
突然、遺品となってしまった着物たち。
途端に苦しくなりました。いっそ全て手放したい、でも出来ない。
目にすることすらしんどくて、それでもたまに出しては眇め、仕舞いこむこと数年。
そんなある日、学校の授業で昔の暮らしを学ぶため、古道具があれば持ってくるよう連絡があり、くけ台を出しました。
頭に?を浮かべる子どもに「サザエさんでフネさんも使っているよ」と渡したら、親近感が湧いた様子。でも学校でも知ってる人は居らず、皆で使い方を調べたそうです。
仕舞いこむより、ずっと「生きた」使い方をしてもらえたかも…
なんだか踏ん切りがつきました。
お嫁入りの品のお嫁入り
最後に残った、くけ台。
これは嫁入りの品で、いつかまた使うつもりでした。かつては和装下着を縫ったりしたけれど、もう老眼で膝も指も痛い。もう和裁は出来ないだろう。
手放すことに決め、経緯を添えてフリマに底値で出品してみました。
でも客観的には遺品かな?…お焚き上げすべき?…できれば使って欲しいけど…古道具屋では埃にまみれそう…
悶々とした日々を経て落札。
落札者のアバターは着物姿でした。和服が好きなのかも…良い人に巡り合えました。
こうして嫁入りより15年。思っていたより晴れやかな気持ちで、くけ台を手放すことが出来たのです。
今、祖母の遺品は、お数珠と羽織一枚。美しい品で、この数なら大事にできそうです。見て辛くなったり、心苦しくなることも殆んどありません。
ホッとしているのが正直なところです。
和装品の行方
娘が嫁ぐときは、着物を誂えてあげたいと思っていました。
でも、数年にわたる逡巡を経て、娘に着物を誂え遺すことが良いことかどうか、判らなくなりました。
息子には家土地が相続されるだろう。だからせめて、娘に着物を遺したい。手持ちのなかで良い物はそれ位しか無いのだから。
そう思って、今まで管理していたけれど。
今、私の両親は健在で、誂えてもらった着物は宝物。
そして、娘も着物好きな様子。全てをあげると伝え、今は純粋に喜んではいるけれど…遠い将来、負担にもなるだろう。美品だろうと、愛情があろうと、いくら高価であろうとも。
着物はもう、愛情の代用品ではないのだろう。
むしろ重荷になりかねない。愛情があれば、尚更に。
やはりお金が良いのかな…
手放した方が良いのかな…
私はいずれ死ぬ。
それまでに、着物の行方を決めなければ…
遺された物の中で、娘が立ち尽くさない様に。
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