救難食糧ER3試食 船長の言&被災者の実感 本物は違う!
非常食「救難食糧ER」を試食したら…被災者として実感、やはり本物は違いました。船長の父が言っていたことは本当でした!
救難食糧とは
救難食糧とは、自衛隊や船舶で実際に使用されているレーション(戦闘食)です。
うちにある「救難食糧ER」は、自衛隊や船舶などに卸している製造元、萬有栄養株式会社さんが民間向けに販売しているものですね。
詳しくは⇒救命糧食 ー Wikipedia
父が船員で、これの話を聞いたり実物を見たりしていました。なので震災後、子どもの携帯食として常備させることにしました。
しかしまだ実食したことがなかったので、今日は消費がてら感想をレポートしたいと思います。
救難食糧のつかいかた@私の父の場合
栄養価やカロリーなど、一般的なことは上記のリンクやウェブ上にたくさんあるので置いといて、私の父の生々しい話を。
父はキャプテン
父は大型船の船長さん。
仕事についてはあまり口にしない父で、たまにねだると外国の様子や珍しい経験を聞けるぐらいでした。しかし私たちが大人になり、弟も航海士になると、ふたりからごくまれにズシリとくる話も出てきました。入国時折衝、宗教問題、水死体、亡命者、難民船…
他人のルポでも見ているのかしらと現実離れするような話もあって、本当に厳しい世界で仕事しているんだな、と尊敬し、感謝しています。
そんな厳しい世界で生きている父なので、この救難食糧に関する言葉は印象に残りました。
3日間は食べてはいけない
戦時で無い場合、遭難信号を受け取った近くの船舶は、救助の措置を取る義務があります。なのでまず3日はなるべく食糧を消費せず、できれば飲まず食わずで救助を待つのがセオリーだそうです。
以前紹介したサバイバル3の法則でもあります。
3 hours without SHELTER.(保温なくして3時間)
3 days without WATER.(水なくして3日間)
3 weeks without FOOD.(食べ物なくして3週間)
3 months without HOPE.(希望なくして3カ月)
屈強で精神もタフで健康な海の男達、という前提ではありますが、まずは救助を前提とし3日過ごすのだそうです。
3日過ぎれば致命的
これを裏返えせば、3日すぎてからの救助は致命的ということです。だんだんと喉の渇きに耐え兼ねて、海水を飲む欲望に苦しむと。
しかし海水を飲むイコール死。脱水であっという間に死ぬ。
そもそも、海水を飲む渇望がコントロールできない時点で終わりだと。
この救助が絶望的という状況に陥ってから、海水への渇望と戦いつつ救難食糧を食べ始め、運命との持久戦に入るのだそうです。
現実はセオリー通りではないからこそ過酷
もちろん、これはセオリーです。
あくまでも心構えであって、実際は体調も崩すしケガもあるだろうし、3日間の完全絶食という訳にもいかないのが現実です。そこは当然ながら、柔軟な対応が必要とのこと。実際は救難食糧と共に、保存水や浄水キットなども準備しているでしょうし。
ただし、震災を経験するとなおのこと、これらの父の言葉は重く響きます。
水のない不安、濡れた衣服の恐怖、明かりひとつ無い闇、届かない声。
世界から隔絶された状態から、生き延びる。
その精神力を保つために必要な心構えだと感じています。
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それでは開封の儀
それでは、 試食レポートです。
私のスペック:15時間絶飲絶食、口内砂漠
朝の9時、こちらを開封しました。
箱のサイズは6.3×6.3×9cm、キチキチに入っていて、ずっしり重い。
開封するとこんな感じ。
ビスケット・バーは5.5×4.6×1.5cmで、50g。卵ほどの重さでずっしりきます。
ゼリーは4.5×2.0×1.5cm。側面がくぼんでいて、かなり固く感じます。真空パックでゼリーと袋が密着していたので、開封するときに手こずりました。指の力がないときは剥がすように開封するといいかも。
実食レポート!その実力は本物だった
私はドライマウスで、水を飲んでもガムを噛んでも口が乾く体質です。口中がざらつき、舌は絨毯みたいに感じます。
口を開けたまま寝て起きた後に、幼児がこねて作ったパッサパサのクッキー食べたみたいに、口と喉が渇いてヒリつきます。
非常時の水がない状態をトレースできるかなと思い、さらに今朝は水分を取らずにいました。
そんな口内砂漠の状態で、これらを食べたらどうなるか?
まずは右のゼリー。
3層になっていて、中にはゴマがたくさん入っています。歯を立てると思ったより固く感じますが、しっとりと噛み切れます。噛みしめると、歯ざわりはゼリービーンズの中身を噛んでいる感じ。
中のゴマが良い香りで、舌触りもアクセントに。味は上品な和菓子のようで、それでいてクセも無く後味もサラリ。
そして何より、唾液がすごい。
絶飲していたからか?とも思ったのですが、ふだんガムを噛むときよりも、多量の唾液があふれてきて驚きました。喉からもあふれる感覚。ガムなどのような、強い味で舌に刺激を与えてムリヤリ唾液を出すのではなく、子どもの頃のように自然に潤ってくるあの感じ。
甘味が後を引くけど、嫌な後味じゃなくて自然に唾液を促し、口中をずっと潤してくれます。
そして左のビスケット。
とても固く焼きしめてあり、最初は歯が立たないかに感じました。しかし強く歯を立てると一口大に崩れます。路地の新鮮なキュウリに歯を立てて、噛み切った時のような感覚。
口のなかでほろりと崩れると、大小のかけらとなり、またも唾液があふれてきます。ゼリーのようなゼラチン質でもないのに、よく出来ている。小さいかけらはすぐに唾液でうるおいネットリとした感触に。そのなかで大きいかけらがアクセントとなって、いつまでも口中にとどまります。
飲み込まずにいつまでも味わえる。味は麦焦がしのような落雁のような…でも焦げ感もイヤ味もなく、素朴でなつかしい和菓子、といった感じ。
ホロホロといつのまにか口から消え、こちらも優しい後味が唾液を潤し、いつまでも口中が潤いました。
ゆっくり食べたのもあって、私はけっこう満足感がありました。小腹がすいたらかじる、という食べ方で、午後にやっと無くなりました。
ちなみにこのビスケット&ゼリー1個づつでアンパン1個分のカロリーです。
上記にもありますように、救助が絶望的となってからもなお、生き続けるためのものです。ただひたすら生命活動を維持し、じっと待つための食糧、という使い方になります。これを食べれば元気に活動できる、腹いっぱいになるわけではありません。
本物の実力。危機的状況で食べる様にできている
一番凄い!とおもったのは「唾液を促す能力」です。
口内砂漠のあまり、炊きたてご飯すら喉に引っ掛ける私でも、水なしで問題なく食べられるのは驚きました。
「喉が渇いたら食べる」という食べ方ができる。
味の好みは人により様々でしょうね。ネットでは、味については辛口なレポが多い様に感じました。でも、私はおいしかったし、子ども達も「おいしい」って食べてましたよ。和菓子が好きな方ならおいしいと思うんだけど。
ビスケット・バーはすこし砕けば、お年寄りや小さい子でも食べやすいんじゃないかな。お年寄りが喉に引っ掛けてむせると、命とりですから。
我が家の常備食はオートミールですが、発災直後用の携帯食としてこれらを準備していました。でも正直、市販のシリアルバーにでもしようかな、とか思っていたんです。
でも、またこれを買いなおしすることに決めました。
なにより、この「水がいらない、むせない、喉を潤す」という機能性に本物を感じました。
発災直後や避難時など、危機的状態が続けば喉は乾きます。手元に水分があるかもわかりません。そんな状態で食べるために作られた、まさにリアルな野戦食糧だなと感じました。
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※サイズにつきましては素人採寸なので、誤差についてはご容赦ください。